現代のデジタル技術は、著しく進歩しています。そして、それに伴い世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、日本でもDXが急がれるようになりました。
日本でDXを進めるには、大企業だけでなく、中小企業も業務や組織のデジタル化に取り組む必要があります。しかし、そこで立ちはだかるのが、中小企業ならではの課題です。
そこで今回は、中小企業がDXに取り組むにあたってのメリットや課題、課題に対応するポイントについて解説していきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

まずは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味についてご説明しましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
1.提唱者エリック・ストルターマン教授による定義
「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること(概念)」
2. 経済産業省による定義
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、 データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に、 製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、 競争上の優位性を確立すること」(https://www.jaspanet.or.jp/sites/default/files/成田審議官資料.pdf)

もともと、DXはスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって、2004年に提唱された概念でした。
その後、世界的なDXが進みその必要性が増す中で、経済産業省はDXを、上記のように「デジタル技術を活用した企業変革、およびそれによる優位性確立」と、より具体的な内容で定義しています。
人々の生活、つまり社会でDXを進めるには、まず企業がデジタル技術を取り入れ、ビジネスモデルや業務を変革する必要があります。そのため、日本では、あらゆる企業をデジタル企業に変革すべく、国を挙げ、企業に向けたDXの推進が行われています。

中小企業がDXに取り組むメリット

国はDX推進に力を入れていますが、中小企業がDXに取り組むメリットは何なのでしょうか。
ここでは、中小企業がDXに取り組む5つのメリットをご紹介します。

業務効率化による人手不足解消

日本では、労働力人口の減少による人手不足が深刻です。少ない人員で業務を回している中小企業は多いでしょう。
しかし、ビジネスモデルや業務のDXが進めば、データを活かした確度の高い施策を行えたり手動業務が自動になったりと、業務効率を向上させられます。業務効率が上がれば、必要な労力は減り、少ない人員でも無理なく業務を回せるようになります。

レガシーシステムのリスクを解消

古いシステム(レガシーシステム)は、運用やメンテナンスなどのために高い維持費が必要です。また、システムが古くなるにつれ、トラブルのリスクも高まります。
DXによって最新のシステムを導入すれば、レガシーシステムによるコストやリスクは解消され、システムを効率的に活用することが可能です。

業務属人化防止・全体のレベルアップ

業務の属人化とは、ある業務の進め方や現状について特定の担当者しか把握できていない状況を指します。
DXを進め、あらゆる情報をデータ化し共有できるようにすれば、業務の進め方や現状について特定の人しかわからないという状態をなくすことが可能です。また、情報共有によりひとりひとりの従業員の知識が増えれば、担当できる業務の幅も広がり、結果として全体のレベルアップを図れます。

顧客満足度・信頼度の向上

デジタル技術でデータを活用すれば、企業は、それぞれの顧客に合った的確なアプローチができるようになります。近年の多様化する顧客ニーズに対応することで顧客満足度は向上し、企業に対する顧客の信頼度向上も期待できます。

災害やトラブルへの備えに

DXは、緊急時のBCP対策としても有効です。
業務やプロセスをデジタル化しておけば、災害やトラブルが起こっても、オンラインを活用し、離れた場所からでも少ない人員で企業の運営を継続させることができます。コロナ禍のように、迅速にリモートワークを取り入れることも可能でしょう。
また、AIやIoTを活用したシステムでは、故障やトラブルの予測も可能なので、担当者は事前に備えることができます。

中小企業でDXに取り組む際の課題

中小企業がDXに取り組むには、課題もあります。多くの中小企業に見られる4つの課題について見ていきましょう。

課題1:IT人材・予算不足

市場では、IT人材が不足しています。そのため、企業間ではIT人材の奪い合いになっており、中小企業でも十分にIT人材が確保できないという課題があります。
また、ITへの投資には費用がかかりますが、予算が十分にない点も課題のひとつ。
人材や予算が確保できなければ、DXは思うように進められません。

課題2:既存システムのブラックボックス化

レガシーシステムには、現在に至るまでのつぎはぎのような拡張や担当者の退職などにより、複雑化しているものが多く見られます。システムがどう構築されているのかブラックボックスのようになっていて、そのままでは十分活用できないどころか、最新システムに引き継ぐことも簡単ではありません。

課題3:業務の属人化

業務の属人化も、中小企業におけるDX課題のひとつです。
業務が属人化し、特定の人にしかわからない業務や把握できていない情報がある状態では、業務の改善が行いにくく、DXも進めにくくなってしまいます。
DXは業務属人化解消に効果的ですが、DX推進時にはどの業務や情報が属人化しているのか把握する必要があるでしょう。

課題4:現場のDXに対する理解が進まない

経営層がDXを進めたいと思っていても、現場がデジタル技術に対応しきれなかったり今までのやり方が変わるのを拒んだりして、現実的にDXを進められない場合もあります。
現場からのDXに対する理解がなければ、効果的なDXは実現しません。

中小企業がDXに取り組む際のポイント

中小企業がDXを成功させるには、取り組みの中で押さえておきたいポイントがいくつかあります。ここからは、中小企業がDXに取り組む際のポイントを6つ挙げていきます。

目的の明確化と共有

DXに取り組む際には、事前に目的を明確にしておく必要があります。「DXによって何を目指すのか」を明確化し、従業員に共有することで、会社全体で同じ方向性を持ってDXに取り組むことが可能になります。
ただし、この時気をつけたいのが、DXおよびデジタル化が目的にならないようにすること。DXやデジタル化はあくまで手段なので、その先にあるメリットを目的にすることが大切です。

DX推進チームを発足

DXを進めていくには、IT人材によるDX推進チームを発足させ、従業員をリードしてもらうやり方が効果的です。IT人材に、経営層に専任されたDX推進チームとして活動してもらえば、IT人材自体の人数は少なくても会社全体への影響力は強くなり、積極的な推進が可能になります。

まずはスモールスタートで低予算から

DXを進めるなら、いきなり全てを変えるのではなく、スモールスタートで始めるのがおすすめです。急な変革では、費用が膨大になり、従業員の負担も大きくなってしまいます。
まずは低予算で、販売管理や経理などの身近な業務からデジタル化をはじめましょう。
また、IT導入補助金など、国からの補助金も活用するようにしてください。

従業員のITリテラシー向上

DXを円滑に進めるには、従業員のITリテラシーを高め、理解を得ることも必要です。
DXの目的を共有し、DXの重要性や新システムについての講習会を開くなどして、従業員の意識改革を行い、システムを現場で有効活用できる環境を整えましょう。

DXツール導入

DXには複数の施策がありますが、ツール導入もそのひとつです。情報共有ツールや分析ツールを導入すれば、社内での情報共有やデータに基づいた戦略策定は身近なものになります。
ただし、ツールにはさまざまな種類があるため、ツール選定は慎重に行うようにしてください。

アウトソーシングも検討

IT人材が不足したりブラックボックス化したシステムが自社では分析不明であったりする場合には、専門企業へのアウトソーシングも検討してください。
人手不足の中、無理に自社だけでDXを推進するよりも、豊富な知識を持った外部企業にシステム分析や構築をアウトソーシングした方が、DX推進の効率性が向上する可能性があります。

まとめ

DXの推進には、中小企業の課題を解決する大きなメリットがあります。しかし、進め方によっては、DXの推進自体が企業の負担になってしまう可能性もあります。
中小企業がDXに取り組む際には、ツールやサービス、補助金などを活用し、まずは小規模から、企業全体で取り組むことが大切です。そうして企業全体の意識が変われば、成果を出し、DXの範囲を徐々に広げていけるでしょう。