皆さんは、企業の封筒や名刺の隅に、青い「P」のマークを見かけたことはありませんか。
これは、「プライバシーマーク」と呼ばれるもの。企業の個人情報取り扱いの姿勢や仕組みを示すマークとして活用されています。

このプライバシーマークは、どの企業でも使用できるわけではおりません。マーク取得には、一定の要件を満たし、審査機関から認証を受ける必要があります。では、要件を満たし認証を受けてまで得るプライバシーマークには、どんなメリットがあるのでしょうか。

今回は、メリットやデメリットを中心に、プライバシーマークについて詳しく解説します。

プライバシーマークとは

プライバシーマークとは、プライバシーマーク制度に基づき、適合した事業者に付与されるマークのことです。

プライバシーマーク制度は、個人情報の取り扱いについて適切な仕組みを構築している事業者を評価する制度。JIS(日本産業規格)が策定する日本規格「JIS Q 15001(個人情報保護マネジメントシステム)」の要求事項に適合したと認められた企業は、JIS Q 15001の認証を取得し、プライバシーマークを使用した事業活動を行うことができます。

個人情報の取り扱いが重視される現代社会において、プライバシーマークは企業の価値を左右する一要素となっています。

プライバシーマーク取得のメリット

JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)は、プライバシーマーク制度の目的を以下のように定めています。

・消費者の目に見えるプライバシーマークで示すことによって、個人情報の保護に関する消費者の意識の向上を図ること
・適切な個人情報の取扱いを推進することによって、消費者の個人情報の保護意識の高まりにこたえ、社会的な信用を得るためのインセンティブを事業者に与えること
(引用:プライバシー制度『制度案内 概要と目的』より)

このように、プライバシーマーク制度は、その導入によって消費者と事業者の両方がメリットを享受できるよう策定されています。
この制度の目的をもとに、プライバシーマーク取得によって企業が得られるメリットを7つ見ていきましょう。

メリット1:社会的信頼の向上

第三者機関の審査によって得られる認証であるプライバシーマークは、信頼性の高い制度です。企業独自のものでなく、日本国内の標準規格であると言う点で、その価値は高いと言えます。

プライバシーマークは、「個人情報を適切に扱う企業である」と認められた証。個人情報の取り扱いが重視される現代において、プライバシーマークを持つ企業が相手であれば、取引する企業や消費者は安心して個人情報を預けることができます

企業の社会的信頼性が向上することは、プライバシーマーク取得における大きなメリットです。

メリット2:優位性のアピール

先述の通り、プライバシーマークを取得した企業は、プライバシーマークを活用した事業活動を行うことができます。
自社が発行する資料や封筒、名刺、広告などにプライバシーマークを載せることで、社会に対し、自社の顧客情報管理における優位性をアピールすることが可能です。
名刺や広告のプライバシーマークを見て、その企業に好感を持つ消費者も多いでしょう。

このように、プライバシーマークの取得は、他社と比較した自社の優位性アピールにも役立ちます

メリット3:情報漏えいの防止

プライバシーマークは、JISの要求事項を満たし第三者機関から認証された個人情報保護マネジメントシステムを構築した企業に付与されるものです。つまり、企業は「個人情報を守る仕組み」を手にすることになります。

認証を受けたマネジメントシステムを運用し続けていくことで、企業は高いレベルで個人情報の漏えいを防止することができます

メリット4:個人情報保護法への適応

個人情報保護法とは、個人情報の取り扱いについて遵守すべきルールを定めた法律のこと。2022年には、情報のグローバル化を踏まえ、改正法が施行されました。

プライバシーマークの取得には、この個人情報保護法に対応したシステム構築が必要です。そのため、企業はシステムを構築する中で、個人情報の取り扱いを明確にし、社内での法令遵守を徹底する仕組みを確立することができます

メリット5:社内意識の向上

プライバシーマークを取得し維持するためには、1年に1回、従業員に対する個人情報保護教育を行わなくてはなりません。この教育により、企業は従業員の情報リテラシーを高め、社内全体の個人情報取り扱いに関する意識を向上させることができます。

従業員の意識向上は、人的ミスによる個人情報の漏えい防止にも効果的です。

メリット6:事業参入機会の増加

プライバシーマークの取得により、企業は事業参入機会を増やすことができます

BtoBの取引において個人情報をやり取りする際に、「プライバシーマークを取得した企業と取引したい」と考える企業が多いのは当然でしょう。
実際に、取引先企業にプライバシーマークの取得を要請する企業や、官公庁が入札要件にプライバシーマークの取得を挙げる例は少なくありません。
プライバシーマークを取得した企業は、取引先企業の要請や官公庁の要件に対応することができるため、事業参入のチャンスを広げられます
逆に、プライバシーマークを取得していないと、多くの参入機会を逃すことになりかねません。

また、プライバシーマーク取得した企業には、相手との取引がスムーズに進んだり受注が増加したりする可能性も期待できます。

メリット7:優れた人材の確保

人手不足が深刻化する現代において、優れた人材の確保は企業の喫緊の課題です。

プライバシーマークは、優れた人材の確保にも一役買います。プライバシーマークの有無が、安心して履歴書を送れる指針となったり、企業の優劣を判断する基準になったりする可能性があるためです。
優れた人材は情報リテラシーにも優れ、個人情報の扱いを重視していることも多いので、プライバシーマークに注目する可能性は十分に考えられます。

プライバシーマーク取得のデメリット

プライバシーマークの取得についてはメリットの面ばかりがフューチャーされやすいですが、一定のデメリットがあることも把握しておかなければなりません。
主なデメリットを3点挙げてみましょう。

デメリット1:システムの構築・運用に手間がかかる

JISの要求事項を満たした個人情報保護マネジメントシステムを構築することは、簡単ではありません。システム構築には時間と労力が必要です。
また、プライバシーマークを維持するにはシステムを運用し続ける必要がありますが、これにも労力がいります。

このようなシステムの構築・運用にかかる手間は、従業員の負担となる可能性があります

デメリット2:定期的な更新や監査が必要

プライバシーマークを取得した企業は、2年に1回の更新や1年に1回の内部監査、1年に1回の従業員に対する個人情報保護教育などを実施しなければなりません。
プライバシーマークを維持するために必要なこれらの手続きが、既存業務を圧迫する可能性があります。

デメリット3:完全に個人情報のリスクを防げるわけではない

個人情報保護マネジメントシステムを構築しプライバシーマークを取得したからといって、完全に個人情報に関するリスクを防げるわけではありません。郵便物の誤配送など、システム外でのミスによってインシデントが発生するリスクはあります。

プライバシーマーク取得企業で個人情報漏えい事故が発生した場合、企業にはJIPDECへ報告義務が生じ、事故の内容によってはプライバシーマークが取り消されることもあります。

PマークとISMSの違い

Pマークと混同されやすいものに、ISMSがあります。

ISMSとは、「情報セキュリティマネジメントシステム」を指す言葉。簡単に言うと、情報セキュリティを管理するための仕組みのことです。

ISMSには、ISOにより「ISO27001」という国際規格が策定されています。ISMSは「仕組み」を、ISO27001は「ISMSの国際規格」を指す言葉なので綿密に言うと意味は異なるのですが、これらはどちらも「ISMSの国際規格」を指す同じ意味の言葉としてよく使用されています。
そのため、ISO27001の認証を取得した事業者は、「ISMS事業者」とも呼ばれます。

では、PマークとISMS(ISO27001)の違いについて見ていきましょう。
これらはどちらも情報に関するマネジメントシステムですが、下表のような違いがあります。

Pマーク ISMS(ISO27001)
概要 個人情報保護のためのマネジメントシステム 全ての情報保護のためのマネジメントシステム
規格の種類 日本規格(日本国内のみの標準) 国際規格(世界的な標準)
適用範囲 組織全体(法人単位) 組織全体、または組織の一部

Pマークが個人情報だけを対象としているのに対し、ISMS(ISO27001)は全ての情報の保護を対象とします。
また、規格の種類や適用範囲にも違いがあります。

プライバシーマークの取得企業数

2021年9月30日時点でのプライバシーマークの取得企業数は、16,772社です。
その中でも格段に多い業種が、サービス業。12,795社もの企業がプライバシーマークを取得しています。
他の業種も含め、表で見てみましょう。

業種 プライバシーマーク取得企業数
サービス業 12,795
製造業 1,434
卸・小売・飲食料業 920
運輸・通信業 757
建設業 316
不動産業 272
金融・保険業 258
電気・ガス・水道 20

(参考:JIPDEC 『プライバシーマーク付与事業者情報 2021年9月30日』より)

このように、プライバシーマーク取得企業数には、業種によって大きな差があることがわかります。不動産や金融、保険、インフラなどは個人情報を多く取り扱う印象がありますが、意外にプライバシーマークを取得している企業は少ないのですね。

まとめ

プライバシーマークは、その企業が「個人情報をどのように取り扱っているか」を示すマークです。個人情報にまつわるトラブルが深刻化していることを考えると、プライバシーマークは、企業や消費者が取引する企業を選ぶための、ひとつの指針となるでしょう。

個人情報を適切に取り扱い社会的信頼を得るためにも、企業はプライバシーマークの取得を検討する必要があります。