国によるDX推進や深刻な人手不足の影響を受け、企業ではDX化が進められています。中小企業においても、企業の特性や課題を踏まえたDX化で成果をあげている企業は少なくありません。
では、各企業はどのような手段でDX化を成功させているのでしょうか。
今回は、中小企業のDX化成功事例を、企業規模ごとにご紹介していきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「デジタル技術を活用して行う、ビジネスモデルや業務、組織などの企業活動の変革」を指す言葉です。

社会では人手不足や顧客ニーズの多様化、また商品・サービスのコモディティ化(同質化)が進んでいます。これらの社会的背景により、企業はDXにより業務を効率化し競争力を高めなければ、生き残れない状況になっています。

また、経済産業省は「2025年の崖」として、企業がDXを進めずレガシーシステム(古いシステム)を使い続けた場合、2025年以降に多額の経済損失が出ることを示唆しています。
経済損失を防ぎ、厳しい社会で企業価値を高め生き残るためには、大企業も中小企業も早急にDXを進める必要があるのです。

DXを実現させた中小企業の成功事例

ここからは、DXを実現させた中小企業の成功事例を、企業規模ごとに紹介していきます。
なお、各事例は2020年7月発行の独立行政法人情報処理推進機構『中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書』(https://www.ipa.go.jp/files/000084035.pdf)の情報を参考にしています。

10~100人規模

まずは、10〜100人規模の企業におけるDX成功事例を3つご紹介します。

株式会社高山プレス製作所の事例‐

株式会社高山プレス製作所は、自動車や電機機器の精密プレス部品を生産する福岡県の企業です。同社は以下のような課題を抱えていました。

◆課題
1.プレス加工後の排出・洗浄・整列作業の人件費が嵩んでいる。
2.製品の特性上起こる、プレス加工後の不良品割合が2割にも及んでいる。

◆課題解決のためのDXの取り組み
・プレス加工後の自動整列システムを開発

高山プレス製作所では、補助金を活用し、プレス後に起こる2つの課題を解決すべく、自動整列システムを開発しました。品質把握により不良原因を調査した結果、システムの自動化で手動による作業のコストやミスを減少させたのです。
このことにより、同社は『攻めのIT経営中小企業百選」にも選ばれ、業界から高い評価を受けることになりました。
現在は開発担当者の退職によりシステムの運用を停止していますが、今後のDX推進にも意欲を示しています。

‐株式会社木幡計器製作所の事例‐

株式会社木幡計器製作所は、船舶向けの計器を中心に計測・制御機器を手掛ける老舗メーカーです。
同社は安定した経営を行う一方で、以下のような課題も抱えていました。

◆課題
1.計器のメンテナンスがコスト削減の対象にされやすい。メンテナンスの人員不足。
2.将来的な受注が下降する可能性がある

◆課題解決のためのDXの取り組み
・計器の遠隔監視システムを開発
・遠隔監視システムを活用した、医療分野へのマーケット開拓

木幡計器製作所は、課題をもとに計器の生産からメンテナンスへと視野を広げ、計器を遠隔監視できるシステムを開発しました。自由なアイディア出しと地元企業との連携、DX人材の確保、補助金の活用などが、その勝因だとしています。
また、同社は開発したシステムを医療用酸素ガスの残量監視に活用し、新たに医療分野へのマーケットを開拓しました。これにより、将来的な受注の落ち込みという課題も解決したことになります。
木幡計器製作所は、他にも医療用測定機器の開発やスタートアップ支援施設の開設など、DXへの取り組みを積極的に進めています。

‐株式会社ウチダ製作所の事例‐

株式会社ウチダ製作所は、自動車の窓枠を支える金属部品『ディビジョンバー・ブラケット』をはじめとした、プレス加工部品を製造・販売する企業です。
大手自動車メーカ向けの製品を手掛ける同社は、以下のような課題を抱えていました。

◆課題
1.現地金型メーカーの廃業増加により、需要に対し供給が追いつかない状態に。特に、高難易度プレス金型において深刻化。
2.現地での金型設計者の不足。
3. 設計から製造、仕上げまで行える中小企業がない。
4.縦割りの狭い取引関係により、経営が不安定に。

◆課題解決のためのDXの取り組み
・プレス加工金型メーカーやIoTデバイスメーカーと連携した「金型共同受注サービス」の開始(各メーカーの製造設備にIoTデバイス取り付け、稼働状況をクラウド上で見える化した。これにより、受注時の、各メーカーの仕事量と設備能力に応じた選択が可能に。)
・離れた場所のメーカーとも連携する「遠隔ものづくり」の実現

株式会社ウチダ製作所では、需要過多という課題を、他メーカーとの連携によって解決しました。賛同するメーカーと手を組み、そこに仕事量や設備能力の可視化というデジタル技術を採用することで、効率的な仕事の割り当てを可能にしたのです。これにより、各メーカーは、今までの狭い取引関係からも脱却できました。
また、ITツールや輸送を用いることで、遠隔地のメーカーとの提携も可能になり、より柔軟な需要への対応を実現させました。

100~300人規模

次に、100〜300人規模の企業におけるDXの成功事例を見ていきましょう。

‐碌々産業株式会社の事例‐

碌々産業株式会社は、高精度高速小径微細加工機や特殊加工機、プリント基板加工機の製造・開発・販売を行う企業です。

同社は、以下のような課題を抱えていました。

◆課題
1.納品した機械が高頻度で「故障した」と言われる。
2.設備の減価償却期間が長いことにより、顧客との関係が途絶えやすい。

◆課題解決のためのDXの取り組み
・機械の遠隔監視システム開発による、故障の原因究明
・開発したシステムのデータに基づいた保守・点検・コンサルティング(使い方の指導)をサービス化

碌々産業株式会社は、生産機械の多くを台湾の企業に納品していましたが、相手企業の人材流出によるパフォーマンス低下や人為的故障までも同社のせいにされてしまうという現状がありました。そのため、故障の明確な原因究明が必要だと考え、専門家との連携やDX人材の確保を経て行ったのが、納品した機械を遠隔監視するシステムの開発です。
このシステムは、故障原因の究明だけでなく、その結果に基づく保守・点検・コンサルティングサービスの開始も実現させました。
結果、継続的な顧客とのコミュニケーションも可能になり、抱えていた2つの課題を解決するに至ったのです。

300~1,000人規模

最後に、300〜1,000人規模の企業におけるDX成功事例をご紹介します。

‐日進工業株式会社の事例‐

日進工業株式会社は、自動車向けの小型・高精度樹脂部品を手掛ける愛知県のメーカーです。
同社では2005年に就任した現社長のもと、以下の課題を解決すべく、DX化を進めました。

◆課題
1.日本のものづくりに対する危機感。スマートファクトリー化(DXによりビジネスプロセスを変革した工場)の必要性。

◆課題解決のためのDXの取り組み
・専用システムの開発による製造ライン稼働状態の可視化
・各設備からの情報収集による分析と対策

日進工業株式会社では、ソフトウェア開発企業の社長経験を持つ現社長がリーダーシップを取り、スマートファクトリー化を目指しました。
開発したシステムにより、稼働状況の把握やデータ分析を可能にしたことで、生産性の低いラインへの対策を行うことができ、その結果、ライン稼働率をそれまでの50%から90%へ上げることに成功しています。
売上も大幅に伸ばし、同社はDXによる成長を続けています。

まとめ

ご紹介したように、企業はさまざまな側面からDXに取り組んでいます。このDXの取り組みを成功させるには、まず自社の抱える課題を的確に把握することが大切です。
課題を把握し、その課題の解決策としてデジタル・IT技術を取り入れれば、より良い企業経営が叶い、DXの推進は成功するでしょう。